ペットと飼い主の高齢化問題~それでもペットを飼いたいシニア達~

2016年8月30日

高齢者にとってペットは心の支えとなるが

図 年代別飼育状況

※平成25年度 犬猫の年代別現在飼育状況の年代別現在飼育状況

()カッコ内は平成24年度の数字

「平成25年度全国犬・猫飼育実態調査」ペットフード協会によると、犬全体の平均寿命は 14.2 歳、猫全体の平均寿命は 15.0 歳。20~30年前の犬の寿命が7~8年と言われていた(定かではない)ことからすると長生きになったといわれています。また飼い主は子育ての一段落する50代、定年退職する60代でペットを飼う人が多くなっているのが現実です。同調査では高齢者にとってペットは精神的な支えとなっていると報告しています。内閣府が行った2012年「動物愛護に関する世論調査」によると驚くべきことに、70代の4人に一人がペットを飼っているといいます。

 50代以上になってペットを育てるということは、生活に潤いやハリがでて、人や社会と今までとは違うつながりを持つようになり、笑顔の量も増え、感受性も豊かになります。犬と見つめあうと幸せホルモン(オキトシン)が分泌され、お互いの絆が深まると麻布大学などの研究チームが報告しています。これは人間の母親と幼児の関係と同じメカニズムなのです。人間にとってはもう一度子育てする幸せを感じられるということです。

また、ペットを撫でるとリラックス効果によって中性脂肪やコレステロール、血圧などの値が下がることも知られていますし、犬の寝息は老いた体の生理的状態をも改善するのです。

 

 ペットに依存し社会から孤立する悲劇、深刻な高齢者の多頭飼い崩壊 

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※写真はイメージです

高齢者がペットに愛情を注ぐのは大変良い事なのですが、それが行き過ぎると新たな問題が生まれます。ペットとの関係が心地良すぎて、社会とのつながりをないがしろにしてしまうケースです。ペットのことでご近所とトラブルが起きるとなおさらです。病気になったりケガをした時、具体的にサポートしてくれるのは人間です。元気な時は問題ないのですが、いざ倒れた時、近所の人は中々気づかず、ペットも衰弱してしまう、最悪どちらも亡くなってしまうという悲劇に見舞われます。中には高齢者が認知症などを発症しており、ペットが被害を受けている場合もあります。本人は世話をしているつもりでいても、猫を寒い中外に放りだしたり、犬に虐待を加えているケース等が報告されています。

さらに、犬や猫の多頭飼いのトラブルから周りと疎遠になり、社会との関係が完全に絶ち、孤立、精神的にも追い詰められるケースは要注意です。そうなってしまうと、うつ状態になり、ペットの世話もおざなりになり、結果ペットだけが増え続け、飼い主の金銭的な破たんや病気・死亡などで、多頭飼い崩壊といった最悪なケースになります。高齢飼い主の死亡などによる多頭飼い崩壊は現在後を絶ちません。中には50匹、多い時で100匹近くの犬や猫が行政・ボランティア等の介入によりレスキューされます。行政によっては殺処分ゼロを目指しているにもかかわらず、これらの崩壊の為キャパオーバーとなり、先に収容されていた犬・猫が殺処分されることもあるのです。この問題は具体的な解決策がありません。子供の虐待同様、近隣で気づいた人の通報、専門家(犬猫ボランティアのレスキュー隊)が情報をキャッチする等で発覚しており、多頭飼い崩壊を未然に防げるような、システム化された手立てがないのです。

たとえサポートしてくれる家族がいても

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※写真はイメージです

テレビの番組で、犬や猫を飼っている高齢者に「自分が病気になったりした時のことを考えていますか?」とインタビューしていました。ほとんどの高齢者が「今まで考えたこともない」というような回答だったと記憶しています。元気な時は考えないものかもしれません。譲渡会でも高齢者の方が飼いたいということで、家族と共に犬や猫を見に来られることが多いように見受けられます。

意外にも犬を希望される高齢者は、中型犬以上を好まれる方が結構おられます。高齢者が犬の散歩時に転倒し、大けがをしてしまったということは、当たり前に起こり得ることです。家族の方がケアするという条件であっても、譲渡する側は懸念を拭えず、断らざるを得ないケースも多いのです。

「自分が病気になったり、死んだりした時の事を考えたことがない」という場合は、周りで言ってくれる方がいないのかもわかりませんが、孤独な環境にあるのかもしれません。家族や友人・知人と日常的に接することがない状態が続くと、社会性を失っていくといいます。つながりがない中では、自分を客観視できなくなるということが考えられます。高齢者に限ったことではありませんが、人とのつながりをなくすと自分の価値観だけが肥大していきます。

「犬を飼いたいので、譲渡会に行くと、はじめは話をしてくれるが、次第に相手にされなくなる。一人で住んでいるので、ワンワン鳴いてくれる中型犬がいい。」とおっしゃっていた高齢の女性にはサポートしてくれる家族が近くに住んでおられました。譲渡会では希望したワンコ以外は興味がないようでしたが、第一希望は通らなかったと思います。サポートしてくれる家族がいらっしゃるので、譲渡される機会は今後あるかもしれません。この女性が保護犬を飼うことが出来ればいいのですが。ご自身のケガにつながりにくい小型犬や、おとなしいと折り紙付きの犬を希望される日が来ればいいのですが。