動物の立場になり考える動物行政、堺市動物指導センターがHPに写真を載せない理由とは

2015年11月20日

写真を載せると、衝動的な『飼いたい!』を招くことになる

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(2015/11/13)
 堺市保健所(動物指導センター)をじゃんぬさんと共に訪問しました。堺市動物指導センターは「事前登録の面談で飼いたい動物の希望を聞き、飼育環境などを確認をし、後日連絡をいれる」というマッチング・システムです。訪問した主な理由は「HPに写真を載せていない、希望されなかった犬猫はどうなるのか、もしかしたら闇に葬られているのではないのか」という不信感でした。数年前は堺市動物指導センターの評判が余り良くなかった、ということもありました。

 「なぜ、HPに写真を載せないんですか?」と質問すると、「写真だけでは特性は伝わらないので面談をして、その方が本当に動物を飼えそうな人かどうか、その犬が本当に幸せに暮らせるかどうかということを、第一に考えています。」

 「迷子のワンちゃんの写真は載せているのですが、その場合でも『可愛いから飼いたい!』と犬を飼えない環境でありながら譲渡を希望する方もいるため、その対応に追われることも、要因のひとつです。」

 「ですので、まず登録して頂いて、飼いたい犬種(猫種)やその他の希望をうかがい、住環境を確認させて頂いてから、犬猫の性格にあった飼い主さんであれば連絡を入れるということをしています。ここにいる子達はそれぞれ事情があってここにいるので、写真を見て『この子!』という突発的な衝動で飼うような事になると、あとで問題となることが多いのです。」

時間はかかってもその子の幸せを考える、マッチングを最重視する理由

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 それでは、誰も希望が入らない子はどうなるんですか?(こちらサイドはガスで殺処分されるものと思い込んでいます。)

 「譲渡可能な子は1年以上いる子もいます。」

 聞けば、堺市はH26年より炭酸ガスの殺処分機は廃止し、麻酔注射による殺処分に切り替えています。「麻酔注射を、ものすごく怖がる子がいるので、その点は動物に対して申し訳ないと思っています。」「申し訳ない」という言葉が出るくらい、麻酔注射を怖がる子がいるということです。

 殺される側において「安楽」死というものが、存在するのでしょうか。こちらの職員さんも麻酔処置について、「無痛ではあるが安楽死と呼ぶのはどうか」といった見解です。「(身体的には)無痛」であるだけで、「安楽死」といった呼び方を安易に使うのは、危険です。呼び方ひとつで、持ち込みをする人の罪悪感を軽くしてしまうことは避けたいですね。

 殺処分の判定は獣医師3人以上で下すそうです。ただ、判断基準をつくると生き延びるチャンスが狭くなるのでいろんな可能性を考えて判断している、ということです。例えば「咬みつき」のみを基準にするのではなく、総合的に判断するということです。

 なお、ガス処分機はメンテナンスや部品にひどくお金がかかります。頭数が少なければ、人件費など総合的に考えてもガス処分機の方が経費がかかるそうです。麻酔処置の場合、職員が噛まれたりなどの安全性の問題はあります。一方、ガス処分機の場合、ガスボンベを取り換える時の危険性があり、職員の安全性のためにもメンテナンスが必須なのです。

 

ここにいる動物にとって、譲渡が悪い方向へ進むことは極力避けたいという姿勢

 職員の方は、他の自治体がHPに写真を掲載している、ということもリサーチされています。ですが、動物にとって悪い方向に転んでしまう可能性が想定されるといいます。迷子犬の写真を見て、住環境がペット不可の場合でも、「譲渡してほしい」としつこく言ってくるケースが過去何件かあったそうです。

 「現在は収容数もさほど多くありません。もし犬舎があふれかえったり、他の行政や団体の取り組みを検討し、HPで写真を掲載する方がいいと判断した場合、写真掲載も考えています。」ということです。

  かなり真摯に取り組んでおられる様子がよくわかります。動物を大切に思う気持ちがストレートに伝わってきます。なお、堺市以外でも里親になることができます。大阪府下程度の距離で何回か足を運べる里親さんであれば、問題ないということです。 

 里親になりたい方の希望を聞く面談では、「とにかく(どんな動物とどのように暮らしたいか等の)イメージが聞きたい」そうです。具体的には犬の場合「子犬希望、できれば幼いほうがいい」という方が一番多いということです。後は「犬種」「毛が抜けにくい」「色」などの希望が多く、猫の場合は「雑種」「なんでもいい」という方が多いそうです。

怖がりな子は職場にサークルを置き慣れさせる、早く譲渡可能になるよう愛情を注ぐ

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 職員さん達がいる部屋でサークルに入れて人に慣らしているワンちゃんがいます。
例えばこの子は可愛いので写真を掲載したら直ぐに希望が入ると思います。ですが人が苦手という特性があり、家族構成にも配慮してあげたいし、犬に慣れている方に里親さんになってほしいのです。時間は掛っても適性のある方に譲渡したい。ですので、特定の職員以外にも懐くようになるまで譲渡はできないのです。」と熱く語られます。

 正直、堺市の動物指導センターの取り組みがここまで真摯であるとは、想像もしていませんでした。うれしい誤算でした。誤解していて申し訳ありませんでした。

 ペットの引き取り相談は「年末」や「大型連休前」に増えるそうです。旅行が理由の引き取りや預かりは断っています。引っ越しの場合でも、出来うる限り新しい飼い主を自力で探してもらっているそうです。職員さんは「ネグレクトなどの不適正な飼養をするならば、こちらでよりよい飼い主さんを見つけてあげた方がいいのでは、と思っています。」。

 またSNSでの情報の1人歩きも、危惧されています。迷子情報に載せると、公示期限(犬を抑留した旨を公示する期間であり、狂犬病予防法において抑留後2日間と定められている)を殺処分の期限だと勘違いし、SNSで拡散されるケースがあるそうです。公示期限が過ぎれば殺処分されるわけではありませんので、お気を付け下さい。

 

人口80万人都市の堺市の、動物行政に係る年間費用はおよそ3000万円

 最後に政令指定都市として独立した動物行政である堺動物指導どセンターの年間にかかる費用はおよそ3,000万円だそうです。

(※この場合、動物飼養・管理費だけでなく建物修繕、印刷代、鑑札代等動物行政に係るすべての費用を含みます)  

 職員は10人(アルバイト含む)。堺市の人口はおよそ84万人。

(平成26年度 犬 収容数9、引取83 /猫 引取211、負傷収容27 )

 

 大阪府、中核市の人口は枚方市の人口約41万人、高槻市約36万人、豊中市約40万人です。大阪府への委託費用はおおよそ2000万円台。どの中核市も独立して動物行政ができうるように思えませんか?

 堺市動物指導センターは一見プレハブに見えるブロック造りです。もともとは公園用地なので仮設住宅しかたてられなかったそうです。(昭和49年設立)犬舎は基本獣医師のみが出入りし、天気の良い日はワンちゃんに日光浴をさせてあげます。

 仮設の建物については「収容頭数減ってますからねー。犬舎はボロくはないですよ。」と特に気にしてない職員さん。一方じゃんぬさんは、これほどまじめに取り組んでいる動物行政の部門が、粗末に扱われていることに憤りを感じています。

 一方、行政は他との比較でしか評価できない部分があり、相対的に「堺市動物指導センターは素晴らしい」と驚嘆してしまいがちです。じゃんぬさんにしてみれば「これは当たり前のこと」なのです。このような動物行政はもちろん称賛されるべきなのですが、こういう行政が増えることで、「動物行政は本来こうあるべきものだ」という認識が、当たり前になってほしいものですね。

 いずれにしても、動物の立場になって考え、真摯に業務に取り組む職員さんの笑顔はとても素敵ですね。