動物愛護先進国イギリスから学ぶべきことは、人間が犬にもたらした悲劇を解決する姿勢

2015年11月18日

犬のアーチー、フランスなまりの英語にしか反応しなくなり

ロンドンで飼い主に捨てられシェルターで保護されている犬が、フランスなまりの英語にしか反応しなくなったと話題だ。

ジャックラッセルテリア犬の「アーチー」は4歳。今年前半にロンドン・ヘアフィールドの施設「Dog Trust」に保護された。8カ月前からほとんどの週末を、幼稚園教師マリーエレーヌ・レオニさん(57)と過ごしている。

レオニさんはロンドン西部在住だが、もともとはフランス南東部サボワ県出身。レオニさんと散歩したり少し遠出をしたりして週末を過ごしてから、保護施設に戻るアーチーは、レオニさんのようなフランスなまりで話しかけないと反応しなくなったという。

おかげで「Dog Trust」のスタッフは、アーチーに対してはレオニさんのアクセントを真似する羽目になった。

フランス語で「かわいいワンちゃん」と

レオニさんは、アーチーにフランスの童謡を歌って聞かせているそうで、「かわいいワンちゃん」という意味の「Poupounette」と呼んだり、「私のかわいい子」という意味の「mon petit chou」と呼んだりしているという。

「そうやって呼ぶようになって、どんどん私を信用してくれるようになったんですよ」

「Dogs Trust」の飼育員リジー・スミスさんは「とても素敵なフランスのアクセントで、それを耳にした時のアーチーの反応はすごいです。ほかの時はそんなに反応しないのに。なので私たちのところに戻ってくると、みんなでマリーエレーヌのアクセントを真似してみるんです」と話す。

ただし、真似してはみるものの「必ずうまくいくわけではなくて」とスミスさん。

レオニさんは仕事などの関係で、アーチーを完全に自分で飼うことができない。

「Dogs Trust」によると、アーチーはそろそろ優しい家族に迎えてもらっても良い状態になってきた。そこで、次の飼い主は「フランス式に」話すことができたらうってつけだとスタッフは話している。

news JAPAN /BBC より転載

イギリス

 上記のニュースでは、イギリスの保護施設が、どれだけ犬の立場になって考え、犬と里親のマッチングシステムを真剣に考えているかが伝わってきます。 

 イギリスの首都ロンドンでは、緑地に色々な犬種が散歩に来るそうです。ミックス犬(雑種犬)もたくさん来ます。ミックス犬の多くは「バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム」という動物の保護施設から迎えた子で、通称「バタシードッグ」と呼ばれています。「バタシー」は、150年近い歴史があるイギリスで最も有名なアニマル・シェルター(動物の保護施設)。ちなみに、イギリスは日本のような行政システムではないので、行政が保護している訳ではありません。

 イギリスの施設のほとんどが健康な犬猫は処分しない、というポリシーだそうです。バタシー・ホームでは多くの犬が一ヶ月以内に貰われていきます。長くいた子で3年位だとか。イギリス人は動物愛護にプライドを持つ国民だといいます。彼らはバタシーの犬を飼うことに誇りをもっています。ですが、バタシー・ホームでは2009年には犬 7,866 頭を受け入れ、2,815 頭を殺処分し、その中には健康な犬が 1,931 頭含まれていたことが報じられてもいます。(2010年調査では動物保護施設における年間殺処分頭数は犬が 1~1.3 万頭、猫が 1.7~2 万頭と推定される。)

 イギリスが動物愛護の先進国と自他ともに認めているのは、世界に先駆けて動物愛護運動が起こり、動物保護法の整備においても先行しているからです。しかし、動物愛護精神の高まりは、動物虐待が顕著であったことに起因します。19世紀初頭には使役動物への残虐行為やアニマル・スポーツにおける虐待行為を中心に動物愛護運動が展開されました。19世紀前半には上昇志向を持つ新興中産階級の間で流行した愛玩犬への熱狂は、犬がステータスシンボルとなるようなイギリスの階級社会が浮き彫りになったといわれています。そこには身勝手な溺愛と虐待が問題視されました。この問題は、現代の日本にあてはまるかもしれません。

 一時大流行し今では斜陽産業となったグレイハウンド・レーシングでは、レース犬の繁殖から廃犬になる過程で、年間1万頭ものグレイハウンド種のレース犬が殺処分されたともいわれています。帝国主義への郷愁ともいわれるフォックス・ハンティングをめぐる論争は、今だくすぶり続けているようです。また、反社会的な行動を取る若者の人気を集めたスタッフォードシャー・ブルテリアも保護団体への入居が急増するなど対応に苦慮しているとの報告もあります。

 このように動物愛護先進国と呼ばれるイギリスが、一概に愛護精神に富んでいたとも言えない事実があります。犬との付き合いは生活文化であり、大きな社会のシステムの影響を受けざるを得ないものです。イギリスでの動物愛護運動は、飼育という意味やキリスト教の教えからも管理・抑制の意味合いを帯びていたといえます。しかしイギリス人が、犬と共に暮らす安らぎを維持するために、人間の身勝手が犬にもたらした矛盾を、解決する取り組みに力を入れていることは事実です。文化も歴史も異なる日本がイギリスから学ぶべきことは、殺処分数の数でなく、人間が犬にもたらした悲劇・矛盾を解決する姿勢なのかもしれません。

参考文献:「それでもイギリス人は犬が好き」飯田操、「諸外国における犬猫殺処分をめぐる状況 」国立国会図書館